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 シフトⅡ ――世界はクリアを待っている―― (うえお久光/メディアワークス)


 積んでいたハードカバー版シフト、二冊目。
 おもしろかったです。
 今巻は前巻とちがって『向こう』ではなくこちら(現実世界)の話が多めになっています。

 ラケルこと赤松裕樹がなぜ中途半端な時期に転入してきたのかをはじめ、現実世界での謎の一部が明かされるとともに次巻への大きな歯車が動きはじめました。
 やっぱりおもしろいです。
 ラケルの話は前巻でかなり描かれていましたが、今度は現実世界での裕樹が動かなければならない話であり。
 またそこから影響して『向こう』の自分であるラケルが動くわけです。
 意識的にはまったく別物であるはずの二つの世界、二人の自分がどうしてもつながりを切り離せないところが興味深いですね。

 そして内容的には『黄金』というキーワードもワクワクなのですが、やはり『流転』とセピアにまつわる話がよかったですね。
 “変化”という言葉には二面性があって、見方と捉え方によってまったく別物になってしまうのがおもしろいです。
 またそれに関しては『ミカタ』のコウにも少しはあてはまる話なのかもしれません(日奈のこととか)。
 それとコウと重なると思ったのはもうひとつ、魔王の存在。
 いつか倒される運命にある魔王、という設定自体もさることながら、(またその座に返り咲くことも辞さないと心に決めた)裕樹の姿はコウに通ずるところがあると思いました。
 コウと裕樹の人物造形がわりと似てる(?)気がするのも理由ではありますが、コウが(日奈を生き返らせることを倫理的にみて間違っているとわかっていながら、ただ恋人であり、ただの高校生の女の子であった日奈が死んだことに“納得”できず)、行動を起こしたのがそれで。
 今回のラケルは正反対でありながら、けっきょくのところ(“納得”するために)動こうと決めたわけですよね。
 その辺りは意識的に似通わせているのかはわかりませんが、うえおさんの描く悪役(ヒール)の根底をなす大事な要素なのかもしれません。
 最後に裕樹が“いずれ負ける運命”に対して抱いた気持ちも考えもすべては『向こう』に限定する必要がなくて、そっくりそのまま『こちら』にも同じことが言えてしまうのも、とてもおもしろいなと思いました。

 くだくだ書いたけど、とにかくおもしろかったです。
 いちおう文庫版も買ってあるので続編である文庫版三巻を買ったらいずれまとめて読んでいこうと思います。
 あー、《イブ》のときもそうだったけど、誰がどの役にあたるのかというのも二転三転するのかなぁ、気になるなぁ。
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