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 狂乱家族日記 壱さつめ (日日日/ファミ通文庫)


 主役のイラストが某エリダナの貧困咒式士にそっくりなのが無性に気になる……。

 うーん、ちょっと微妙な感触。
 序盤はとにかくヒロイン凶華と家族全員の紹介に終始するだけでストーリーはなく、中盤はいきなり銀夏と優歌にスポットが当たって急展開。
 描写が何一つないのに雹霞や帝架は家族に溶け込んでいますし、凰火(主人公)と月香の空気っぷりが泣けます。
 何というか、家族計画を知らされた面々が協調性0でバラバラな時期をすっとばし、仲良くなったところから話が始まったような印象。
 これってアットホームものとしてどうなのでしょう。お約束な「障害を乗り越えて家族がまとまりました」展開がないんだものなぁ。

 終盤は優歌と千子を中心に家族計画な展開をしているのでいちおうは満足。勢いもあって楽しめます。
 ここにきてようやく凶華の傲慢っぷりが力強さとして感じられたのは良かったです。

 でも全体的にキャラとストーリーの繋ぎ方が上手くない気がしてなりません。もうちょっとキャラ同士を上手く絡めて欲しかったです。


 10/31(火)読了
 評価:★★★☆☆
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 ちーちゃんは悠久の向こう (日日日/新風社)


 ようやっと日日日さんの作品に手をつけてみました。
 たしかにこれはすごい。まるで新人らしくない作品ですね。賞を取るのも納得。

 話はちーちゃんが不思議な子という設定で始まるのですが、徐々に暗く陰鬱な方向に進みます。そして最後にはちょっとホラー風な幕。
 印象としては「普通」でまかり通っていた日常をゆっくりと壊していくような背徳的、エッジの利いた後味の悪さが残りましたね。
 構成も上手く、文章が非常に読みやすいです。この読みやすさは橋本紡さんっぽいかな。谷川さんとかの流暢さとは若干ちがうような。

 内容はただ崩れていくだけなのにどこか身に詰まされるような息苦しさも感じます。それはきっと、これが青春小説としても読み取れるからなのでしょうね。
 序盤のちーちゃんは不思議に憧れるただの女の子で、後半は変貌してしまいます。これをただそういうものとして受け止めてもいいのですが、僕としてはもう一つの可能性のほうが痛々しくてたまらないです。
 それはちーちゃんが(幽霊を見えるようになった、というのがすべて嘘、もしくは幻覚の類だった場合です。本人の自覚の有無は関係なく、そういったものの実在を証明することは誰にもできません。別に狂言だったからちーちゃんは嘘つきだ、なんて言いたいのではなく、たとえば『コスチューム!』のような感じです。思春期の欲求と感情が現実にありはしない、もしくは本人以外の誰にも感知できないものを見せてしまう。そんな場合、ちーちゃんは異常の世界に踏み込んでいて、逆に武藤先輩などは普通世界の象徴なわけです。ちーちゃんとの関わりでどちらの世界にも繋がりのあったモンちゃんが白先輩を選んだとき、ちーちゃんは完全に普通の世界との繋がりをなくしてしまったのですね。)当たり前のことかも知れませんが書きたかったので書きました。話の流れ的には前者なのですが(ラストのシーンもありますし)、後者の場合だったと仮定するとこのちーちゃんという少女が果てしなく痛々しく感じられます。やりきれません。

 長々と書いてしまいましたが作品全体としてはとても面白かったです。これを(おそらく)直感的に書いてしまえるのは才能なのでしょうね。
 他の作品も楽しみです。

 追記:ちーちゃんも可哀相ですが武藤先輩も可哀相。一番好きなキャラでした。

 追記2:解説の作家さんの人となりを知らないためか、傲慢な感じの態度が不快でした。

 追記3:そういえば作中に「屍薔薇姫」の名前が出てましたね。たしか電撃の選考で落とされていた作品の題名が「鮮血! 屍薔薇姫!」みたいなタイトルだったと思います。なんで落としちゃうのかな、電撃。読みたいのに……。


 10/26(木)読了
 評価:★★★★☆+



 クイックハルト (郁雄/吉武 /文芸社)


 こちら の作者さんから献本していただきました。ありがとうございます。
 なお、記事の内容に関しては一任してもらっていますのでひいき目とかそういうのは無しで、いつも通りの感想でいきます。むしろ気負って読んだのでいつもより辛口になっている気があるかも(汗)。

 読み終えた感じではまあまあな面白さ、というところでしょうか。あともったいないという印象が終始拭えなかったです。

 この作品はとにかく世界設定が奇抜で興味深いです。ネット世界とかはよくありますがそれを自己流にアレンジした遠未来の不思議な世界観だと思います。

 キャラはそこそこな立ち具合で、ヒロインの巨乳描写が秀逸(笑)。作者さんは心からの巨乳好きのようですね。
 個人的には近恵さんがお気に入り。前時代的な話し方で良妻賢母という言葉が似合いそうな貴婦人です。素敵。

 ここから気になったところとか、不満な点とか。

 全体を通して、また特に序盤で展開が駆け足ぎみなので感情移入がしづらかったです。そのためキャラクターの言動が突発的に感じられて少し違和感を感じます。

 <昭和>の人が後代日本のことを詳しく知らないとはいえ、世界(未来)が「確実」に続いていくという事実を知ってしまっている設定はどうなのかな、と思いました。未来とは常に不確実性で包み隠されたものでなければ人々は明日に夢見ることはできないような気がします。明日が、明後日が不確実で不明瞭だから今日を精一杯生きて、より良い明日を迎えられるように進歩していくものではないでしょうか。小さいことかもしれませんが気になりました。

 キャラたちは自分たちがデータ上の存在であるということに疑問を抱かないのでしょうか。自分という存在が真の意味で肉体を持たないことに、己のアイデンティティを自らの内に認められるのでしょうか。下手したら自分は単なるコピーかもしれないとか(現代ならクローンかもしれないとか)途中でそういった描写がありましたがもっと早く、深く悩んで然るべき問題に感じます。

 もっとも理解しがたかったのがドライブスペース内での時間の経過。<昭和日本>は永遠に昭和を繰り返すという設定なのに住民は毎日を働いて一日ごとに前へ進んでいます。いつか平成並みの文化度に達し昭和の世界から逸脱すると思います。

 ストーリーの最後のところ、クイックハルトをする理由を理解できなかったのが少し後味が悪いですね。そもそもサイバーテロリストが、(破壊活動と防衛活動で力が拮抗するからクイックハルトで決着をつけよう)などという要求に普通、応えるでしょうか。(ドライブスペース側が負けたら「どうぞ壊してください」なんて言うわけないと思います。クイックハルトに負けたら自分たちの存在が消される)というのにこの決着方法はありえないと思います。テロリスト側が条件的に圧倒的不利ですよね。

 それとエンディング場面で何と言いますか、厳密に言うと話が終わってないです。良一と千早の関係は置いといて、肝心の(<嘆きのエヌ>)の正体や狙いや動機が一切不明。謎が謎のままで終わってしまっています。続きがないと本当の意味で終わったとは言えないような。

 全体的に振り返ってみますと、設定の奇抜さを活かしきれず普通のSF風なラノベに留まってしまった印象がとにかく後を引きます。文章は読みやすくそれなりに楽しめるのですが、どうせならもっと大風呂敷を広げてガリガリやってほしかったというのは贅沢な注文でしょうか。
 それと構成的に盛り上がりが弱かった気もしますね。序盤の日常から終盤の非日常への繋ぎが弱い感じ。後半の展開が(一通のメールで唐突に始まりますし。)紙幅が足りないのも原因だと思いますがもう少し焦点を定めて描写してもいいと思います。

 なんだかグダグダになってきたのでここで終了。ちなみに矛盾点、勘違いがあるかもしれないのでそこはご了承を。変に力んでしまいました……。
 てかメチャクチャ偉そうにあれこれ言ってますね(汗)。まあ結論としては悪くはないのだけど世界設定を活用してもう一捻り欲しかった、ということで。
 続きが気になるので2巻が出たら読みたいです。


 10/25(水)読了
 評価:★★★☆☆+





 吸血鬼のおしごとSP The Days Gone By (鈴木鈴/電撃文庫)


 ずっと積んでいてそろそろ終わらせないといけないな、ということでシリーズ終了後のおまけの短編集。
 全体的にコメディー調で懐かしい空気です。

「双月」
 亮史と上弦の出会いを描いた過去編。
 現代よりもより冷酷、もとい感情の稀薄な魎月が冷ややかですね。なんだか最終巻の亮史を思い出させます。

「ラディカル・クッキング」
 舞が亮史に手料理を振舞うドタバタコメディ。
 こんな感じだったんですよね、1巻のころは。いちおうはコメディのはずだったのになぜあんな脱線を……。

「ブラック・マンデー」
 これは面白かったです。ツキ視点で進む話は珍しいですし新鮮。最後の舞との掛け合いがツボでした。

 絵師さんのマンガとの連携も良かったです。こういうコメディな作品だったのに、と過去を思い出して溜め息が出ます(苦笑)。
 シリーズ最後に笑って終了。レレナ一同お疲れ様。


 10/25(水)読了
 評価:★★★★☆-





 三月、七日。 ~その後のハナシ~ (森橋ビンゴ/ファミ通文庫)


 こちらも終わらせなければ、ということで2冊目、最終巻。あー、清々しい面白さでした。

 清く正しい青春小説で何の変哲もない現代が舞台。だけど少年少女は恋に進学に頭を悩ませ胸を焦がします。
 前巻から半年経ち、三月と七日がその後の心情を持て余す話です。
 主人公はどちらかというと三月の方でしょうか。前半はひたすら悶々とした感情を抱くだけでやや退屈だったのですが、中盤以降は事態が悪化、ほとんどヤケになりながら己の感情を発露させていく様が見ていて非常に痛々しく、また限りなく共感できます。こういう思春期特有の融通の利かなさや視野の狭さなどの描写が本当に上手いですね。面白いです。

 題材はありがちではありますが心理描写は等身大の少年少女を感じさせてくれます。個人的には三月と赤坂のコンビが大好きです。男同士でしか分かり合えない共有感とかっていいですよね。
 ひとまずの落着を得たものの今後も色んなものに躓いて成長していくのでしょう。彼らの幸せを願わずにいられません。ファーラム。


 10/25(水)読了
 評価:★★★★☆+



 ストロベリー・パニック!2 (公野櫻子/電撃文庫)


 夜々が可哀相だなぁ。
 モロな学園百合もの第2巻。

 前回よりエトワール選を引き継いで第2戦なのですが、これがまたいや~な競技を持ってくるものです。
 競技そのものは至って地味なので盛り上がりも何もないのですが、カップルの間に入る罅は中々。

 全体的にあまり濃い描写が見られないのが非常に勿体無いのですが、彼女たちのシーンごとの懊悩を想像するとけっこう切なくなれました。
 天音と光莉のカップルはとてもいじらしくて微笑ましいです。こういう初々しい恋心は大好きです。
 そして夜々や玉青といった絶対成功しない脇役、彼女たちが可哀相でした。横で見ていることしかできないので想いは募るばかり。切ない。

 あからさまな敵役も登場しましたし、ちかるんがメチャ腹黒い 策士なので次回も楽しみです。
 静馬様と渚砂は……正直どうでもいいです(苦笑)。

 追記:あーそういえば、文中で伸ばし棒「――」がやたら多くて読みづらかったです。適当なページで数えてみたら22本もありました(汗)。


 10/19(木)読了
 評価:★★★☆☆



 キノの旅10 (時雨沢恵一/電撃文庫)


 ちょっと物足りない印象の第10巻。

「ペットの国」
 予想的中。驚きがなかったので単に残酷な印象しか感じませんでした。

「ティーの願い」
 予想的中。可愛くないなぁとしか思えず。

プロ&エピ「在る男の旅a・b」
 微妙の一言。意外性もないような気がします。

「インタビューの国」
 現実によくありそうな話。そんなに斬新でもなく。

「ホラ吹き達の話」
 これはちょっと面白かったです。ある意味二段構え。
 こういうのをもっと読みたいです。

「保護の国」
 鳥がむかつきます。
 最後はスッキリ。

「電柱の国」
 微妙な感じです。

「こんなところにある国」
 ノーコメント(苦笑)。

「ティーの一日」
 普通にシズ様御一行の一日。

「歌姫のいる国」
 これが楽しめました。歌姫のオチは読めていたのですが内容が微笑ましいです。
 やっていること自体は血生臭いです。それでも負けずに頑張る少年の必死さが胸を打ちました。
 こういう必死さは好きです。

 全体的に奇を衒おうとしてパンチ力不足だったように感じました。そうなると明け透けなあざとさしか見えずちょっと後味が悪かったり。
 最後の「歌姫」が楽しかったので結果そこそこな面白さでした。


 10/18(水)読了
 評価:★★★☆☆





 ゼロの使い魔9 双月の舞踏会 (ヤマグチノボル/MF文庫J)



 ハーレム化進行中。
 順調に進む使い魔コメディ第9巻。

 凱旋ムードの中、祝われる才人に浮かれる仲間たち。しかし彼らの前には新たな刺客も現れ休む暇もありません。
 今巻は才人の株の上昇と、彼を取り巻く状況の変化に終始する、という感じでしょうか。才人がメインの話ですね。
 おバカなドタバタは大変楽しく、その一方で暗躍する敵の影が不穏な空気を匂わせます。あまり派手な展開などはなく大人しめな感じ。
 それでも着々と陰謀は企てられ、少年少女たちは誰それに恋をし、そして戦乱に巻き込まれていくのでしょう。
 今だけが一時の安息なのかもしれません。今後の展開(戦も恋も)が楽しみです。

 追記:終盤であの人が出てくるのはどうなのでしょう。嬉しくはありますがなんだかなぁ。でも東に行くにはあの人の協力は必要そうですね。

 追記2:『メイドの午後』が読みたい(苦笑)。真面目でたまに大胆なシエスタが可愛いですね。


 10/18(水)読了
 評価:★★★★☆


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