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 シフト ――世界はクリアを待っている―― (うえお久光/メディアワークス)


 文庫版も刊行され、いまさらながら積んでいたハードカバー版を読みました(もちろん文庫版も買ってあります)。
 まずファンとしてさすがうえおさん、と言いたくなるくらいしっかり面白かったです。
 世界、勇者、姫君、魔王。
 ファンタジーにおいてはベタもいいところな設定を用いて微妙にオンラインRPGっぽさのある話に仕上がっていました。
 でもたぶん、あとがきにもあるようにうえおさんの楽しんでいたRPG(ファンタジー)というのは今で言うネトゲとは少しちがくて、あくまでうえおさんが子どものときに楽しんだわいわいがやがやしたファンタジーを土台に突きつめていった形がこのシフトなのかなぁ、とか思いました。
 そこがネトゲっぽいけどネトゲじゃなくて、臨場感のある二つめの現実として捉えられている所以なのかもしれません。

 それとラケルこと裕樹はやっぱり悪役(ヒール)なのですね。
 『ミカタ』の堂島コウも悪役であり、『ジャストボイルド』のジュードも悪役とされていました。
 でもうえおさんの描く主人公はみな影があって責められるべきところがあり、弱さもあって、けれど認めざるを得ない正しさも兼ね備えているような。
 そんな共通点があるように思いました。

 内容のほうはすでに買ってある二巻の帯を見るかぎり「いずれ倒される運命にある魔王の物語」らしいのですが、一巻を読み終えた時点では先がどうなるのか予断を許しません。
 おそらく勇者、姫君、魔王の三人が運命に翻弄されるであろうことは理解できても、どのような形で決着がつくのかわからないままで。
 今巻のシェヘラザを見てもバッドエンド的なものはないと信じたいのですが(うえおさんご本人が、そもそもバッドエンドをめざそうとする人ではない気がします)。
 なるたけ明るく、周りがどんなに異論を唱えようと「これでいいのさ」と笑い飛ばしてしまうような終わり方になってくれるとうれしいです。
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 お隣の魔法使い 永遠は三つめの願い (篠崎砂美/GA文庫)


 メアリーの格好がいちいち可愛いですねぇ。
 まったりファンタジーも三冊目です。
 やはりこういう話はバトルものなんかを読んだあとだと、ことさら微笑ましくなりますね。
 いつもとおなじ「ほんわか」した話ばかりでした。

 春はやっぱり渡り猫がよかったです。
 ツクツクさんらしいというか、この作品の象徴のようなまったり具合ですね。
 数え方が猫(にゃんこ)なのも素敵。

 夏はちょっと長めの宝探しの話がいいですね。
 メアリーの水着姿もいいですが、地図を片手に宝をめざす冒険は胸おどるものがあります。

 秋はまず扉絵の猫の女の子がセクシーです。
 話はどれもおもしろくて、『不思議の国のアリス』のような夢を見たり、宝探しっぽいレクリエーションをしたり、男の子のロマンであるドリルが出てきたりと楽しさいっぱいでした。
 ツクツクさん、よくわかってるなぁ(笑)。

 冬はすごろくの話もわいわい楽しいのですが、手紙の話はべつのおもしろさがありますね。
 メアリーとツクツクさん、二人の気持ちが少しだけ見えるところがよかったです。

 このシリーズは本当に貴重なほんわかファンタジーだと思うのでぜひとも続きを読みたいです。
 ああ、四巻が待ち遠しいなぁ。



 灼熱のエスクード MATERIAL GIRL (貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫)


>キキ「お待たせしましたーっ」

 お待ちしてましたー。
 ということでタイトル改め、続刊が出てくれたエスクードです。
 正直、貴子さんの場合は内容以上に続刊が出るかどうかでハラハラしてしまいます(冗談になってない)。

 タイトルを変えて新章スタート。
 前煉獄の二巻三巻があまりレディ・キィと関わりのない(薄い)話だったと思うので、路線を本編に戻したという印象があります。
 進みは遅いのですが、やはり僕は貴子さんの文章が好きなようで、読んでいるだけでおもしろかったです。
 話としてはまだまだ駆け出しの段階で始まりに過ぎないのですが、薫や真澄の過去、レイニーの件、ルーシアと謎の少女のこと、そして本題であるレディ・キィなどなど未解決の話がわんさかあるのですよね。
 この分だとあと十冊書いても終わるかどうか心配になります(ちゃんと続刊が出るかどうか的な意味合いで)。

 今巻に限っていえばオークションのシーンがおもしろかったですね。
 緊張感もあって、相手を騙し騙され、そして我が君こと変態なアルフェルムでにやり。
 たしか三巻にも登場した謎の少女の正体もなんとなくほのめかされ、続きが気になるところで終わっています。
 この感じだと薫のパワーアップも近いのかな。
 主人公にしてはあまりに貧弱な薫がどう戦っていくのか楽しみです。


 追記:あ、それと盲目美女エレンディラが素敵でした。黒髪ロングのおでことか最高(やっぱりおでこか)。



 月明のクロースター ~虚飾の福音~ (萩原麻里/一迅社文庫)


 莉子かわいいなぁ。
 これくらい想ってくれる幼なじみがいたらどんなに幸せでしょう。

 ミッションスクール、秘密の夜会、巻き起こる事件という学園サスペンスな作品。
 表紙イラストがパヤパヤな雰囲気なのですが百合要素はまったくありません。
 この作家さんは初めてでしたがしっかり楽しめました。

 ダークサスペンスと銘打ってあるわりにそれほどダークではなくて、話自体もこざっぱりしている印象があります。
 ですがさまざまな思惑が交錯した物語として見ると、結果的にとても綺麗にまとまっていたのが良かったですね。
 文章も読みやすかったですし、事件に関するオチは予想がつかないこともありませんでしたがそれほど肩透かしを食うわけでもなく、ちゃんと納得のいく結末でした。

 個人的にはむしろそのあとのアレのほうが驚きました。
 (教育実習生)であったというだけで久登が(年齢差があるため莉子のことをずっと妹として見ていた)ことにも説得力が加わります(その気持ちに関しては前向きな答えになっていましたが)。
 教務課まわりのことも併せて、ただでさえまとまっていた物語の外堀を完全に埋めてくれたような気がしました。
 あと(挿絵で気に入っていたナウフラガンティがじつは男)だったのにザ・ショック。
 まあ、かわいいは正義と言いますし、それでいいといえばいいのですが。

 読み終わってから思い返してみると、オスクリの言動の結果が必ずしも悪と断じ切れないのも面白いですね。
 とくに最後のシーンでは彼女の素顔が垣間見えたようで、ほっとした気持ちになりました。

 おもしろかったです。
 この作家さんのべつの作品もぜひ読んでみたいと思いました。



 とある魔術の禁書目録16 (鎌池和馬/電撃文庫)


 そろそろ佳境に入ってきていますね。
 禁書目録も十六巻です。

 今回は後方のアックアとの盛大なバトルなわけですが、もう圧倒的な強さに唖然です。
 それでも立ち向かう彼らがかっこよすぎます。
 それに個人的には女教皇様が活躍してくれたことにもう感無量。
 ああやって自身を見つめなおしたことも含めると、今回は上条と同等以上に主役でもありますね。

 キャラクターのほうでは五和が十四巻以上にしっかり描かれていたり、(上条の記憶喪失のことを知った)美琴にも変化があったり、シェリー=クロムウェルの意外な私生活面を垣間見えたり。
 あと行間に出てくる彼は(いつだったか、神裂ねーちんにプロポーズしていた騎士団長)ですよね、たしか。
 こういう細かいところまで組み上げられているところがすごいですねぇ。

 物語の核である上条の右腕についても進展がありました。
 前巻でも(ドラゴン)というキーワードが出ていましたし、たしか一巻か二巻でも(竜のあごのようなものが現出)していましたよね。
 いろいろ調べてみると(ドラゴン)にはさまざまな解釈があるものの、(キリスト教においては悪魔)を意味しているそうです。
 そう考えると上条の右腕は(ドラゴン=悪魔のちからの一端があふれているに過ぎず、その体内には悪魔が眠っている)のかもしれません。
 それにもしかしたら(悪魔となった堕天使ルシフェルが宿っている)のかもしれませんね。
 あ、でも(一方さんの黒い翼が堕天使を表しているならそちらのほうがルシフェル)に相当するのかも。

 あまり神話とかに詳しくないのでわかりませんが、今回の(上条の右腕があれば神に等しいちからを制御できる)という言葉からアレイスターの目論みも少しだけ見えてきたような気がします。
 いろんな点で続きが気になる作品です。
 はやく次巻が読みたいです。


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