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 青の聖騎士伝説 (深沢美潮/メディアワークス)


 同著者の『フォーチュンクエスト』のキャラクター、クレイ・S・アンダーソンの曽祖父であり、『デュアン・サーク』でデュアンが共に戦い、旅をしたクレイ・ジュダ・アンダーソンの物語です。
 まあ、予備知識なしで読んでもあまり面白くはない作品ではあります(汗)。ファンの人でないと各章の位置づけも理解できませんし、描写の少ないキャラクターに感情移入するのも難しいと思います。
 中身のほうは章ごとに見ていきます。

 「サラスの章」はクレイ・ジュダが伝説のシドの剣を手にする話です。またフォーチュン世界で現れたサラスの起源も明かされます。
 内容としてはご都合なのは仕方ないとしまして、あっさりすぎて心にくるものがありませんでした。もうちょっと本人の活躍を描いて欲しかったところ。

 「ランドの章」はあのトラップのご先祖さまであるランドがクレイ・ジュダと出会う話です。こちらもあっさりしすぎていて微妙な味わいしか得られず。もう少しランドとの掛け合いを見せて欲しかったです。

 「ミルダの章」は深手を負い、ランドともはぐれたクレイ・ジュダが貧乏な村娘・ミルダに介抱される話です。個人的には一番おもしろかった章です。
 動くこともできないクレイ・ジュダと、清貧に喘ぎながらも食べ物や薬のために身体を酷使して働くミルダ。二人の距離が徐々に近づいていく様子は心が温まりました。いい話でした。

 全体的にはまずまずな印象ですが、ファンでないと楽しめない+値段が高いのが惜しいですね。二巻も早いうちに読もうと思います。


 8/10(木)読了
 評価:★★★☆☆+
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 コスチューム! (将吉/産業編集センター)



>『仮面ライダーになりたかった戦闘員』
 この物語を見事に体現している言葉です。ああ、無常。

 面白かったです。この虚脱感、やるせなさ、まさに青春ものです。
 タイトルや表紙イラストから間違っても萌え系と勘違いしてはいけません。紛うことなき青春ものです。
 しかも時事ネタ(マリみてやハガレン)、コスプレやカメコ(カメラ小僧)などを見ても判るとおり、ちょうど〝今〟を生きる若者を等身大に描いた作品です。

 ティーンエイジャーが往々にして感じる心の奥のわだかまり。数え切れない正と負の感情がごった煮になった混沌。
 その中でも特に「自己表現」という言葉に収斂する、うねり狂った感情の飛沫、暴走する行為。
 混乱し沸騰する若者に突き付けられる現実の無情さ、冷酷さ。
 思春期という吊り橋の上で揺れ動く彼ら。
 身につまされます。僕はもちろん、誰もが例外なく通過してきた不安定な時期を彼らは死にもの狂いで生き急ぎます。
 その姿が見ていて切ないのですね。まるで過去の自分を見ているようでやるせないです。

 内容としては序盤の冗長なまでに饒舌な文体が少し気になりました。あとラノベっぽいエンターテインメント性が微妙に希薄な感じで、滝本竜彦さんの「ネガティブハッピーチェーンソーエッジ」にとても似ていると思いました。
 それと最後に、帯の推薦文は的外れな気がしました(どうでもいいことですが)。(心霊写真スキルは聖香が欲して初めて得られた自己表現方法だったはずです)。
 今を生きる僕が〝今〟を描いたこの作品を読めて良かったです。


 8/8(火)読了
 評価:★★★★☆+



 断章のグリムⅡ ヘンゼルとグレーテル (甲田学人/電撃文庫)


 グロいけど面白かったです。
 今回は「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフにした内容で、前回同様、童話と現実世界の符合が面白いですね。
 事件関係者の誰にどの役が配役されるのか、また童話の新しい解釈によって浮かび上がる事件の真相などなど。ハラハラしっぱなしでした(苦笑)。
 また、怪異が一歩、また一歩と迫ってくる身の毛のよだつような描写も秀逸です。ひとつひとつの描写が犠牲者を通してその場の冷ややかさを伝えてくれました。……グロい場面の描写は気持ち悪いのですが(汗)。
 あと雪乃の掘り下げがしっかりできていたのが良かったですね。ただの無愛想ではなく、彼女の素顔が垣間見えた気がします。それと蒼衣も相変わらず勘が鋭く、意外に気配りが利くキャラで好感が持てました。名探偵っぷりは常軌を逸してますがそれはそれ。「シャナ」の悠二といい勝負でしょうか。
 今回もしっかり楽しめたわけですが、物語の芯になりそうな目標が見えてこないのがちょっと不安です。個々に小さな決意はあるのですがストーリーを牽引していく指標が欲しいかもです(敵を定めにくいので仕方ないかもしれませんが)。「Missing」のように現象の羅列で纏め上げるのも悪くありませんが、より明確な指標を持ったほうがより深く物事を関連付けられて面白いと思います。どうなることでしょうか……。


 8/6(日)読了
 評価:★★★★☆+





 ゼロの使い魔5 <トリスタニアの休日> (ヤマグチノボル/MF文庫J)


 今度はそっちに百合フラグが立ったか!(壊)
 夏休みの休暇を利用した短編集です。各話ごとに見てみます。
 「『魅惑の妖精』亭」は一度見てみたかったルイズの平民生活。プライドの高い彼女ならではの平民の生活とのギャップが楽しめました。ただ最後の締め方で結局は権力を笠に着た片付け方だったのが勿体無いところ。もっと違った対処の仕方をして欲しかったと言うのは贅沢でしょうか。
 それとやっぱりヤマグチノボルさんは変態を書くのが上手い(笑)。
 「炎の出会いと風の友情」はキュルケとタバサの邂逅編。手堅い展開でそこそこでした。性格がまったく正反対なのに親友というのはいいものですね。
 「トリスタニアの休日」はまさに「アン王女」なわけですね(笑)。でも内容はコメディというよりシリアス風味でしっかりと本編にも関係のある大事な内容だったりします。ちなみに初登場のアニエスには今後も期待しております(苦笑)。
 短編集とはいえ、本編と大差ないコメディー&シリアスの分量だったと思います。次回以降はどんな展開になるのか(特にシリアス方面)気になります。


 8/6(日)読了
 評価:★★★★☆-



 ゼロの使い魔4 <誓約の水精霊> (ヤマグチノボル/MF文庫J)


 その二人に百合フラグが立ったか!(黙れ)

 えー、巻を重ねるごとに面白くなってきました。最初に感じた和訳文を読んでいるような違和感にも慣れ、サイトのアホっぷりとルイズのツンデレっぷりが楽しくてしょうがないです。特に今回は、方法がやや強引ながらもデレデレなルイズがたまらなく可愛いですね。甘々すぎて読んでいる自分が恥ずかしくなりました(苦笑)。
 そして後半の若干シリアスな話もわりと綺麗にまとまっていていい感じです。そんなに(虚無系統の魔法を使いまくっていいのか)とも思いますが、あのときは仕方なかったのかな。それと個人的にはアンリエッタの選択は女王として間違っていても人として正しかった気がします。ああいうのは頭で割り切れるものではないので切ないですね。
 しっかりと次回以降への布石も打ってあるので、恋と戦争とダブルで動向が気になります。


 8/2(水)読了
 評価:★★★★☆



 フルメタル・パニック! 悩んでられない八方塞がり? (賀東招二/富士見ファンタジア文庫)


 久々に読んだフルメタ短編。面白かったです。
 どの短編もフルメタお約束の「戦争バカと常識の齟齬」を定型通りに扱った作品なのですが、やっぱり面白いものですね。
 思考回路が戦争色な宗介と周囲とのすれ違いが問題を生むのですが、変なところで会話が噛み合い、余計に事態を悪化させてしまうのは愉快でした。
 本編のシリアスな空気が微塵も感じられないのはある意味すごいですよね。本編の続きも読みたくなってきました。

 7/30(日)読了
 評価:★★★★☆-


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